9/11とAkamai Technologies社

みなさんはAkamai Technologies社をご存知だろうか?

http://www.akamai.com/
http://www.akamai.co.jp/

Akamai社は高速なコンテンツ配信を請け負っている会社で,同社の保有する数万台のサーバリソースを利用しての大量の画像や大規模なストリーム配信を得意としている.
アメリカではGoogleYahoo!Microsoft,日本ではYahoo!Japanやmixiなどたくさんの会社が利用をしていて,インターネットを陰で支える縁の下の力持ちといった会社だ.


同社が提供するFreeFlowやFirstPointと呼ばれる配信サービスはまさにAkamai(ハワイ語でCoolの意味)というにふさわしく,初めてそのバックのテクノロジーを教えてもらったときは目から鱗が落ちる思いだった.


ところで9/11は言うまでもなく米同時多発テロが起きた日だがAkamaiのCTOであるDaniel Lewin氏がそのテロに巻き込まれた日でもある.


http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2001/0912/lewin.htm


多くの人にとってあの日の事件はとてもショッキングであったが,インターネットの配信周りではある出来事が起きていた.あれからもう5年もたつが,記憶が残るうちに書き留めておきたいと思う.




テロ当時,ちょうど私は終電で家に着いたばかりで,とりあえずPCを立ち上げてメールをチェックしていた.


「NYに出張中の××さんは無事です」


という友人からのメールに最初何がおきているのかわからず,TVやインターネットの情報で何がおきているのかおぼろげながら把握しつつあった.


その後アメリカのYahoo!を開いてみるがまったくつながらない.あまりのアクセスに米Yahoo!のトップページにアクセスができない状態だったのだ.


Yahoo!のトップページは世界でも有数のアクセスが多いページで,「負荷対策が十分ではなかった」というのはちょっとあり得ない話だ.とはいえ実際にアクセスできなくなったのは事実である.今までのエントリで述べてきたとおり,アクセスがキャパシティを超えるとサーバは反応ができなくなり,事実上サービスはストップする.この状態を打開するにはマシンの増強をするしかないので,回復にはしばらく時間がかかるだろうと思われた.


ところがそれからしばらくして,突然アクセスができるようになった.当初Yahoo!内でサーバの増強が完了したのだと思っていたのだが,HTMLやnslookupの結果を見てみるとまったく違うことがわかった.なんとトップページおよびニュースページや各種画像の一切合財をAkamai配信に切り替えていたのだ.


大規模なサイトを運営している人ならわかってもらえると思うが,画像はともかくHTMLの配信自体を第三者に任せるということは通常ありえない.HTMLの配信ログというのはサイト運営者にとっては金銭を生む源泉であり,生命線とも言える存在だからだ.


「どうせアクセスがさばけないのならログがないのと同じだ.
メディアとしての役割を果たすべき.」


と担当者が考えたかどうかわからないが,この判断はとても適切で,その後アクセスは安定し,ユーザには無事情報が届けられるようになった.

またこの事件により.

  • 「真の速報性と網羅性を有するニュースメディアはインターネットである」
  • 「インターネットはもとよりサイトもインフラである.よって遅いサイトは悪である.」

という認識が私の心の中で芽生え,今でもそれがベースとなっている.


顛末は以上であるが,今でも9/11前後で当時のニュースが流れるたびに当時のことが思い出される.Akamaiの持つテクノロジーの基礎部分はCTOであるDaniel Lewin氏が発明したものだそうだ.繰り返しになるがこれらのテクノロジーは本当にすばらしく,その一つ一つが実に示唆に富んでいて,かつ納得できるものであった.テロ当時,彼の死の原因となったニュースが彼が生み出したテクノロジーによって粛々と配信されていたというのは実に皮肉なことで,彼のような優秀な人材が失われてしまったのはとてもとても残念なことだと思う.


最後になるが,Daniel Lewin氏をはじめテロの犠牲者になった方々の冥福を祈りたい.